★多くのコメントいただきました!
「see/saw」、本当に素晴らしいです。今の時代と社会に向けて、やり場のない激情を炸裂させています。サウンドと映像とダンサーの体がひとつになって疾走しどおしでした。他の都市でも上演してほしい。 石井達郎(舞踊評論家)
ヨコハマ創造都市センターで、Nibrollのダンス「see/saw」を見た。ニブロールは、常に何かを強く訴えかける衝撃力のある作品を発表し続けているが、今回の「see/saw」はその中でもベストワークと評していい素晴らしい作品だ。
前半は4人のダンサーによる、いかにも矢内原美邦の振 付けらしい動き。日常の仕種とトリッキーなムーヴメントを美事にフュージョンした暴力的で被虐的な、しかしリリカルなダンスだ。それは、時間と空間を正確 にプログラミングした、高橋啓祐の幻惑的な映像とリレーションをとりながら進行する。さらにはスカンクの機械音のような無機質でミニマルな音楽が、じわじ わとそれを強力にサポートしていく。何気ない、しかし決定的な記憶への回帰と、それほど遠くない死への戦慄、抵抗、あるいは共鳴。動くことで解体してしま いようなダンサーたちの肉体が、生への希求から死へ至る危機感をも呼び起こしていく。
後半は、スズキタカユキデザインの、黒いコスチュームの18人の若いダンサー、アクターたちがぞろりと登場して来る。ここで前半の「生」のモチーフが一転 「死」のテーマへと移行する。日常のプロダクツが飛翔して永遠に飛び去っていく映像の中で、彼らはあらん限りの声を絞って叫び続ける。世界の終わりに立ち 会っているような絶望と、しかしそれでも林檎の種を蒔こうとするような若々しいアンビバレンツ。ヨコハマ創造都市センターのギリシャ風な白い巨きな列柱 が、死を祀る斎場にも見えてきて、彼らの熟練していない動きや発声が続く。それがかえってダンス作品という既成の完成度を拒絶しながら、リアルで真摯な答えのない行為の連続から、切ない程の共感をオーディエンスに投げかけて来る。
矢内原美邦はまた一段と成熟している。そして高橋啓祐とのコラボレーションは、Nibrollというユニットを、確実にインターナショナルな地平へと、ライジングさせた。必見の作品である。 +link 榎本了壱(アートディレクター)
ヨコハマ創造都市センターにてニブロール『see/saw』。矢内原美邦らしさを存分に注ぎ込み、更に新生ニブロールとしてのネクストディメンションを鮮やか に提示した、恐るべき舞台。とにかく一個の作品としての凝集力が並外れている。映像も照明も光も完璧。2012年ニッポンの「痛み」のダンス。ここ数年の矢内原ダンス作品の中でも最も成功していると僕は思った。ナイーブな少女の傷だらけの内面を、壊れかかったまま激しく痙攣し続けるティーンエイ ジのからだを抱えたまま、ニブロールは大人になった。これなら矢内原美邦の未来は明るい。いや、彼女のダンスは明るくない未来に光を射すだろう。 佐々木敦(評論家 / HEADZ代表 )
ニブロールの《see/saw》。身体、音、映像、影‥何もかもが極限へと相乗していく、その壮絶さに震撼。3.11を想起させずにはいられない。作品として昇華されながら、ここまでガツンとぶつけてきた意志とエネルギー、そして何よりその実現を喜びたい。 四方幸子(キュレーター)
|