「シーザーの戦略的な孤独」2014
「シーザーの戦略的な孤独」Digest
「Bangkok Theatre Festival 2015」出品作品
最優秀女優賞受賞 : Ornanong Thaisriwong
2014. Jan at 大阪市立創造館(芸創セレクション参加)
2014. Feb at 吉祥寺シアター
2015. Nov at Thong Lor Art Space(タイ・バンコク)
作・演出 : 矢内原美邦
出演 :
足立智充 光瀬指絵 本多力
2015バンコクバージョン出演:
川田希 Ornanong Thaisriwong Pavinee Samakkabutr
舞台監督:鈴木康郎
映像:高橋啓祐
照明:南香織
シェイクスピア作『アテネのタイモン』を大胆にアレンジし、2012年に岸田國士戯曲賞を受賞した矢内原美邦が、再びシェイクスピアに挑む。次に題材に選んだのは「ブルータス、おまえもか」の台詞で有名な『ジュリアス・シー ザー』。矢内原はこの物語を「自ら孤独を選んだ男の物語」と読み解き、そうした男たちが、それぞれの「憧れ」を抱くことをきっかけに変わっていく姿を現代に置き換えて描く。
photo:Hideto Maezawa
今回の作品『シーザーの戦略的な孤独』は、吉祥寺シアター主催の「シェイクスピアシリーズ」として公演依頼を受けてものです。言うまでもなく『ジュリアス・シーザー』を題材にした作品です。題材というか、あくまでモティーフなのですが、この戯曲に出てくるあまりにも有名なあのセリフ、「ブルータス、お前もか」の「も」について、極端に言ってしまえばその「も」についてのみ今回は書きました。
この「も」には、人間同士の裏切りやコミニケーションから生じる孤独、疎外、それらの永久的な連鎖がこめられているように感じます。人はこの連鎖から逃れるために、その安易なひとつの手段として孤独になろうとします。「どこまでも自由ってことは、どこまでも孤独ってこと」と、私の好きな昔の映画にはそんなセリフがありましたが、そんな孤独のあり方はここ数年大きく変容してきていると思います。自分の身を守るために戦略的に孤独を身にまとう、永久的な連鎖から逃れるためにわたしたちはなにを選択するのか。その結果もたらされる未来は誰にもわかりませんが、それが意図的にせよ、無意識にせよ、わたしたちは常にその選択を迫られているとここ最近実感しています。シーザーが言った「も」には絶望の念が込められていますが、私はどうにか迷いながらも、言葉と身体のつながりのなかで、希望の「も」を見つけ出したいと思っています。
- Review -
西田留美可(舞踊評論家)一部抜粋
矢内原は「原発や放射能の問題をはずして語れない」と語っていた。それらの問題にどう向き合い、どのように乗り越え、希望をもって生きていけばよいのか。もちろん簡単に答えが得られるわけではないが、それを考えるヒントはこの作品のあちこちに散りばめられている。
従来の矢内原の演劇作品では、彼女のダンス作品の動きのように、言葉が怒涛のごとく激しく溢れていたが、この作日では言葉の量的圧倒感よりは、言葉そのものが動きにより蘇生しているような感を受けた。振付家が演劇的な作品を手掛ける際によく見かけるように、物語性を強く打ち出すわけでもなく、言葉を音楽的にちりばめていくのでもない。また逆に、演出家がダンスを用いるようなやり方でもない。言葉の交わされ方、言葉と体の動きの連続の仕方に新しい形を生み出そうとしている。ダンスが演劇に侵入して新しい言葉の動きが立ち上がっていくのを期待したい。
Bangkok Theatre Festival
photo:Bangkok Theatre Festival
Flyer design:竹本真紀 石田直久
Bangkok Theatre Festival Flyer
- Credit -
主催:ミクニヤナイハラプロジェクト 大阪市(大阪公演)
共催:公益財団法人武蔵野文化事業団(東京公演)
特別協力:急な坂スタジオ
協力:zacco ニッポンの河川 ヨーロッパ企画 株式会社アルファエージェンシー
企画・制作:precog
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