「幸福 オン ザ 道路」2010

「幸福オンザ道路」ワークインプログレス公演 Digest

2010.Oct at STスポット(横浜)ワークインプログレス公演
2012.Mar at 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール

 

作・演出 : 矢内原美邦

出演 :
光瀬指絵 鈴木将一朗 NIWA 守美樹 柴田雄平
たにぐちいくこ 米田沙織 黒岩三佳

舞台監督:鈴木康郎 湯山千景
映像・美術:高橋啓祐
照明:木藤歩
舞台美術:細川浩伸(急な坂アトリエ)

2010年のワークインプログレス公演(ST spot)を経て、2012年に横浜赤レンガホールにて本公演。

死に向かう人間を救いたい人々の、記憶と妄想、嫉妬と許し、やさしさと憎悪が錯綜する、矢内原独自の視点で描く生と死をめぐるサスペンスドラマ。

ロードムービー的な演劇をやろうと思って書き始めたけれど、映画と違って「あちこちに行けない」のだ、ということに気がついた。ある一点、もしくは円のなかに、人が人を評価し裁き、見捨てて、殺す、そうして救うという概念を繰り広げてゆく。ある人は国のため、社会のため、自分自身の欲望のため、愛するもののため怒り、嫉妬し、憎悪する。とにかくそんな単純じゃない、人は人を傷つけることもするが、助けようともする。そんなことが7人の登場人物のなかから浮き上がり沈む。人は人を殺すけれど、同時に人は人を救いたいと思う。このふたつのことはきっとつながっている。

矢内原コメント

 いま私は演劇というものをやっています。やっているつもりです。ツイッターほどの短い文でも誤字脱字するような私が、演劇を書くことになるとは少しまえまで想像もしていませんでした。それでも最近は、言葉というのは自分たちが体験したことを忘れないためにあるのだろうと思いつつ、今日もまたこの劇と向き合っています。いま、人になにかを伝えるために、それが言葉である必要をときに感じてさえいます。しかしながら、本当に伝えたいことなんて、ないと思えばないし、あると思えばあったりするような、不確かな私です。ただ、「ある」と思って日々を生きるほうが幸せだろうと、誰かに言われているように思います。
 こんな私でもやっぱり生きているあいだに幸福について考えたりするのです。それは同時に、死ぬことについて考えることでもあります。いつか私たちは死ぬでしょう?それはどうしたって避けられないのでしょう?自分の死体を想像します。動かなくなった体を。私たちは必ず死体につながっています。死体に未来を感じ、生きていることだけがすべてではないと思いはじめます。体を失っても、ときに感覚は残るように、声はなくても、ときに言葉は残るように、やっぱり死体に未来を感じます。
 いまから50年もまえに、路上を放浪し、ヒッピーの神様とまで崇められた彼は、行き着いたその果てで「そこにはなにもなかった」と言って死にました。「ただそこには風景があった」と。私は最期にどんな風景を見るのでしょうか?そんな風景を、演劇をとおして、言葉をとおして、どうしても伝えていきたい。å未来のために。たったいま死ぬかもしれない私たちのために。

- Future Article -

矢内原美邦インタビュー +Big Issue Online

 

- Review -

松井みどり(美術評論家)「リバティーンズ No.3」掲載 一部抜粋

 矢内原は「生きることも、死ぬことも、もう外の世界に求めなくていい。ここで、この部屋で、物語は始められるのだから」と述べた。観客自身が「今ここ」の出来事に反応し、断片を拾う過程のなかで発話や動作の集積から意識が立ち上がる様を追体験させる矢内原の演劇の時間は「死に向かって生きる」人間の一瞬一瞬の積み重ねの実体化なのだ。それは「ひとつの身体がつみあげる時間の蓄積、記憶感、距離感、365日のあり方みたいなものを表現したい」という彼女のこれからのダンス観とも深く共鳴している。

 

山崎健太(演劇研究・批評)+小劇場レビューマガジン wonderland

木村覚(ダンス批評家)+artscapeレビュー

Flyer design:アベミズキ 石田直久

Flyer design:中島古英 石田直久

- Credit -

主催:ミクニヤナイハラプロジェクト
共催:横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
後援:神奈川新聞社 FMヨコハマ 横浜市ケーブルテレビ協議会
   tvk RFラジオ日本
助成:芸術文化振興基金
特別協力:急な坂スタジオ
協力:STスポット あひるなんちゃら T1project ニッポンの河川
   チェリーブロッサムハイスクール ワニモール
企画・制作:precog

 

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+ 2012 横浜公演

design:石田直久 photo:中島古英


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