「THIS IS WEATHER NEWS」 2010

「THIS IS WEATHER NEWS」Promotion

あいちトリエンナーレ2010共同制作作品

2010. Oct. あいちトリエンナーレ at 愛知県芸術劇場
2011. Jun. at シアタートラム(東京)

 

演出・振付 : 矢内原美邦
映像 : 高橋啓祐
音楽 : スカンク/SKANK
衣装:矢内原充志
照明:村瀬満佐夫

出演 :
カスヤマリコ 橋本規靖 鈴木拓郎 菊沢将憲 福島彩子 矢内原美邦

Flyer design:
Okamoto Tsuyoshi+, Nobutaka Sato
(あいちトリエンナーレ2010)

- Concept -

例えば、平均寿命、地球温暖化、時刻表。
~これらは全て「天気予報」みたいなもの〜

「こうしたら、ああなるだろう」と予定調和を前提にして生きる現代において、
現代批判でもなく、回顧主義でもなく、信じてきた価値観が崩壊したと言われても
生き続けなければならない私たちのこれからについて。

矢内原 美邦
日常を生きる。それは本当にそこにあるのか?という疑いから「あーなってもこうならない」という作品が生まれ、そこからこの作品"This is weather news"につながった。「それ」が本当になってしまった今、これから私たちはどこに向かえばよいのか?私たちは大きな問題を抱えながらも前進しなければいけない。生きること=踊ること、と書くのが嫌だったが、今はあえてそう書きたい。私たちに出来ることは、なぜこんな事が起こったのかという問いを超えて立ち上がり、こうなった今、私たちはどうすれば良いのかと問い始めることなのです。この作品を通して日常に生きる意味を問いただし、あーなってもこうならない日常を生きる意味を意識的に見つけていきたい。

高橋 啓祐
今回の大きな震災を経て、生き残った人たちはこれからどうするべきなのかなと考えます。放射能が漏れ出して、日本人はこれまでどれだけのこと忘れてきたのかなと思い出します。こんなはずじゃなかったと嘆きながら、本当はなにもかも生まれたときから知っていたような気もします。「死ぬかもしれない!」と思ったときに、 逃げ出す人たちがいて、それに抗わんとする人たちがいて、それでもやっぱりここで待とうとする人たちがいます。これが最期だよ、と言われた地平のうえで、それでも待ちつづける人たちのことを想像します。「神様!」と祈る代わりに「ここで待ちます」と手をあげる人たちのことを。そしてその時がやがてやってきたとき、「やっぱりな」と彼らがつぶやくのをききたいと思います。

Flyer design:Keiko Itakura(東京公演)

- Feature Articles -

「時代とともに歩んだアーティスト集団・ニブロールの14年」
テキスト:前田愛実

+ CINRA.NET

- Review -

「時代の姿、感覚の流れ」ケトルVOL.02 2011年8月号掲載
 松井みどり(美術評論家)

 ニブロールは、矢内原美邦の振り付けを中心に、映像、音響、照明、衣装が有機的に絡み合い、多層的な意味の広がりを作り出すダンス・カンパニーだ。そこでは、突き飛ばす、踏み出すといった即物的な動きが、むき出しの感情やエネルギーの表出を表すとともに、新たな音や形を作り出し、勝手に拡張する世界の中で居場所を探る現代の人々の「今ここ」の身体のありかを主張する。2011年6月、世田谷シアタートラムで上演された『THIS IS WEATHER NEWS』は、ニブロールの同時代意識とともに、ダンスの身体性への原点回帰を斬新な形で示していた。去年の愛知トリエンナーレでの初演の基本構造を残しながらも、今回のバージョンは即物的効果をより重視して観客の体感覚に直鉄的に訴えかけると同時に、人の身体の純粋運動の媒体として扱いながらなお人間的な意味を伝達する稀有な舞台となっていた。
 初演は、空っぽの空間をどこまでも落下する人型の映像を背景に、若い女性の流動的なソロダンスで始まる「物語」が、二人の男性によるインタビューを通した彼女への言葉と身体の暴力の行使、対立する男女のシルエットから生じる大小の影が抱き合い和解する姿、衣装とボイスチェンジャーによる性差の曖昧化、スクリーン上の哲学的な質問、真っ白な大地と霧に包まれる世界へのすべての還元、そこから再び始まる直物の成長と、二人の女性の終わらない会話のようなダンスといった多彩な要素を通して、愛と支配、破産と生成を繰り返す世界のなかで築かれていく人間の関係性についての思考を喚起した。一方、今回は、爆音による開始の合図、建物にぶつかりながら落下していく人型の映像、めりはりを強調した振り付け、背景に混じる鈍い衝撃音が、五感を通して観客に衝撃の強度を伝えた。同時に、威嚇、疾走、叫び、赤いハイヒールを人にぶつけるといった行為は、純粋な運動や音を作りだためのルールに従って行なわるゲームであることが強調されていた。ぼろ布を投げて人の身体を覆い、白い大きな布の下に追い込むような、一見「いじめ」と見られる行為もまた、布の堆積やうねりや突起により模様や図形を舞台上に表出させれうという、現代美術のアルテ・ボーヴェラのような、パフォーマンスを通した「絵画」の構築だった。一方、都市を覆う雲や雨、逃げ出す動物や人々の群れといった映像が原子力の脅威を想起させ、スクリーンから白い布へと降り注ぐように投影される流星群のような模様がダンサー達の身体を覆う様は、鮮烈な視覚美とともに、人の事象もすべてが粒子としてひとつの物理的現象のうちに融合される「この世の終わり」を想起させた。
 ふたつのバージョンの違いは、人間の運命の儚さや、身体の逆説的なしたたかさについての強まった思いを反映しているのかもしれない。と同時に、完璧にも思えた初演の構造をあえて崩して正反対の方向に向かうことで、変わる世界の歩みに寄り添いながらダンスの指標を再構築していくニブロールの漂流的な制作姿勢に現代ダンスの良心を感じた。

- Credit -

共同制作:あいちトリエンナーレ2010
企画制作:あいちトリエンナーレ実行委員会

プロデューサー:伊藤剛
舞台監督:鈴木康郎 湯山千景
音響:須貝一也
宣伝美術:岡本健+ 佐藤暢隆(愛知公演)
      板倉敬子(東京公演)
記録写真:佐藤暢隆 南部辰雄

主催:ニブロール
提携:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター(東京公演)
後援:世田谷区(東京公演)
助成:芸術文化振興基金 東京都文化発信事業
特別協力:急な坂スタジオ

制作:precog

 

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