「曖昧な犬」2017

「曖昧な犬」Promotion

2017. Mar. at クリエイティブセンター大阪
2018. Mar. at 吉祥寺シアター

 

作・演出 : 矢内原美邦

出演 :
立花裕介 白木原一仁 生島璃空(大阪公演)
石松太一 菊沢将憲 細谷貴宏(東京公演)

技術監督:鈴木康郎
舞台監督:湯山千景
映像・美術:高橋啓祐
照明:南香織(LICHT-ER)

なにが正しくて、なにが間違っているのか。誰かの記憶か、いつかの夢か? 記憶が曖昧で、分からない。
この光のない小さな部屋の外に、本当に世界はあるのだろうか…。

宮沢賢治の短編童話『ガドルフの百合』の作中に“不確かな記憶”を象徴するかのように登場する「曖昧な犬」をタイトルとする本作は、何もかも“記録”することで薄れていく“記憶”や、モビリティが高くなりあらゆる境界線が曖昧になっていく社会、そして自分がいる世界から脱することのできない閉塞感やその中で生きる人間像を、光のない小さな部屋に閉じ込められた3人により描き出す。舞台美術・視覚効果としてライブカメラを使用し、高橋啓祐のプログラミングによってリアルタイムの映像と事前に録画した映像を織り交ぜることで、過去・現在・未来が交錯していく様を映し出す。
また、2018年3月の東京公演では、野田秀樹の舞台を中心に数々の舞台で活躍する菊沢将憲、平田オリザが主宰を務める劇団 「青年団」所属の石松太一、小劇場演劇を中心に活動する細谷貴宏、というそれぞれ活躍の場が異なりながらも矢内原作品への出演経験を持つ熟練の俳優3名を迎え、パワーとスピード感の溢れる舞台を届ける。ミクニヤナイハラプロジェクト立ち上げ以来初、男性俳優のみの作品。

photo:Hideto Maezawa

矢内原美邦コメント

 「人はなんのために生きていますか?」そう聞いたのは祖母だった。私はまだ小さな子どもだった。国語の教師だった祖母は教室で生徒に質問するみたいに言った。問われたのは私ではなく、仕事をせずに家でゴロゴロしていた私の父だった。父は「めんどくせぇ」と笑って家を出て行った。祖母は後を追わなかった。ただ言葉を続けた。「誰かのために生きて、そこに充実した人生を感じる人もいますけどね、もちろんそれはそれでよいことかもしれません、ですが、誰かのために生きるというのは意外と楽なものです。美邦さんはなんのために生きていますか?」突然そう聞かれて私はなにも答えられなかった。祖母は私の答えを待ち続けた。ずいぶんと長い時間だったようにも、とても短い時間だったようにも思う。部屋の時計がカチカチと永遠にも思われるような時を刻んでいた。私はその時計を見ながら、もうすぐ大好きな「大草原の小さな家」が始まってしまうと、そのことばかりが気になっていた。その時間のことをいまでも鮮明に覚えている。次の日、祖母は交通事故にあって、それから亡くなるまで8年もの間ベッドに寝ていた。「ねえ、おばあちゃん、いっしょに大草原の小さな家見ようよ」しびれを切らした私はたぶんそう言ったと思う。祖母は少し笑ってきっとテレビを付けてくれる。どんな話だったかは覚えてない。私はローラではなかったし、私の父もチャールズではもちろんなかった。それはべつに憧れの家族像でもなんでもなかった。ただ祖母が唯一見ることを許してくれるこの遠い国の家族の茶番を、そうして祖母と一緒に見ている時間が私は大好きだった。結局私は祖母の質問に答えられないままいまに至っている。あの時の時間は私の中でまだカチカチと鳴っている。あの時間のことをなんと名付けようか。実体のないものに寄り添うには言葉しかないのかな、とも最近思う。記憶のかけらをたぐりよせて、なんのために生きているのかを考えている。そんなものに答えはないのはしっている。曖昧な犬とは、いるのかいないのか、そこにあるのかないのか、よくわからない存在で、たとえばそれを宮沢賢治は犬と名付けたけど、名前のない、言葉のない、実体のない、答えのない問いに、なんて答えてみようかと考え始めている。失いかけた誰かとの時間や誰かとの記憶をつなぎとめるために私はなんと叫ぼうか。その言葉の中にしか存在しえない何かを見つけてみたいとも思っている。
そんな思いとともにこの『曖昧な犬』という作品をみんなで作りました。気がついたら演劇をやり始めてもう11年も経ってしまいました。でも私はいまだに演劇というものをわかっていません。そんな私を旗揚げ時からずっと見守ってくれているこの場所でまた公演ができることを嬉しく思っています。観に来てくださった方々の記憶が、この作品に少しでも重なることを願っております。

 

- Future Article -

矢内原美邦インタビュー +SPICE

「光のない部屋に閉じ込められた3人が描く、脱することのできない閉塞感」 +Confetti

- Exhibition -

これまでミクニヤナイハラプロジェクト全公演のフライヤーデザインを手がけてきたデザイナー・石田直久と写真家・中島古英による展示を、公演にあわせて吉祥寺のギャラリー「イロ」と「一日」で開催。
+イロ  +一日

Flyer design:松木崇 石田直久

- Credit -

主催:ミクニヤナイハラプロジェクト
共催:公益財団法人 武蔵野文化事業団
東京公演助成:芸術文化振興基金 アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
大阪公演助成:おおさか創造千島財団
協力:近畿大学矢内原美邦研究室 青年団 ばけもの レトル 竹内桃子 プロデュースユニットななめ45° STAND FLOWER
特別協力:急な坂スタジオ
企画・制作:precog

 

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+ 2017 大阪公演

+ 2018 東京公演

design:石田直久 photo:中島古英


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